HFO-1234zeのエアゾール用途と市場状況について
はじめに
環境への配慮が世界的に求められる中、エアゾール製品業界においても大きな変革が起きています。その中心にあるのが、次世代の環境配慮型噴射剤として注目されているHFO-1234zeです。本稿では、このHFO-1234zeのエアゾール用途における特徴と、現在の市場状況について詳しく見ていきます。
HFO-1234zeとは
HFO-1234zeは、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)と呼ばれる化学物質の一種で、従来広く使用されていたHFC-134aの代替品として開発されました。最大の特徴は、地球温暖化係数(GWP)がわずか6という極めて低い値であることです。これは従来のHFC-134a(GWP=1,430)と比較すると約1/200以下という驚異的な環境性能を実現しています。
さらに、オゾン層破壊係数がゼロであり、大気中で速やかに分解される性質を持つため、環境負荷が非常に小さい物質として評価されています。
エアゾール用途における特性
HFO-1234zeは、エアゾール噴射剤として以下のような優れた特性を持っています。
環境性能 従来のHFC-134aやHFC-152aを使用したエアゾール製品と比較して、温室効果への影響を大幅に削減できます。具体的には、HFC-134a製品から転換することで最大99.5%、HFC-152a製品からでも93%の温室効果ガス削減が可能となります。
安全性 HFO-1234zeは難燃性ガスとして分類されており、火気に対する高い安全性を持っています。日本では2016年11月に施行された高圧ガス保安法施行令の改正により、「特定不活性ガス」として新たに分類されました。この法改正により、エアゾール製品の警告表示ラベルの表記も変更され、より安全性が高い製品として認知されるようになりました。
化学的適合性 水やアルコールに溶解し、多くの材料と適合性があります。また、熱的安定性にも優れており、低級アルコール、ケトン、塩素系溶剤、炭化水素系溶剤など、一般的な溶剤との相溶性が良好です。
主な用途展開
HFO-1234zeは、以下のような多様なエアゾール製品に採用されています。
日用品分野
- ダストブロワー(パソコンや電子機器のホコリ除去用)
- 空気清浄スプレー
- 消臭スプレー
- 掃除用スプレー
- 瞬間冷却スプレー(熱中症対策用)
医療分野
- 吸入器(MDI: メータード・ドーズ・インヘイラー)
- 殺菌・消毒スプレー
工業用途
- 潤滑スプレー
- 錆止めスプレー
- 接着剤スプレー
- 加煙試験用ガス(煙感知器の試験用)
特に日本国内では、2012年頃からダストブロワー製品へのHFO-1234ze採用が本格化しました。
市場動向と成長見通し
グローバル市場におけるHFO全体の規模は、2025年時点で約15億米ドルと推定されており、2032年には約36億米ドルに達すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は12.3%という高い成長が見込まれています。
HFO-1234ze単独の市場も、2033年までに15億米ドルに達し、CAGRは8.2%で成長すると予測されています。この成長を支える要因として、以下の点が挙げられます。
規制面からの後押し モントリオール議定書のキガリ改正をはじめとする国際的な環境規制の強化により、高GWP物質からの転換が加速しています。世界各国でHFC類の段階的削減計画が進められており、低GWP代替品への需要が急増しています。
企業の環境意識向上 ISO14001環境マネジメントシステムに取り組む企業や、グリーン購入法に対応する必要がある事業者にとって、HFO-1234zeを使用した製品への転換は、特別な設備投資を必要とせず温室効果ガス排出を削減できる有効な手段となっています。
技術革新 ハネウェル、アルケマ、ケマーズなどの主要化学メーカーによる継続的な研究開発により、製造プロセスの自動化や効率化が進み、コスト競争力も向上しています。
今後の展望
HFO-1234zeは、環境性能と安全性、実用性を高いレベルで両立した次世代のエアゾール噴射剤として、今後さらなる市場拡大が期待されています。パーソナルケア製品、日用品、工業用途など、従来は環境への影響と可燃性のリスクという二律背反の課題を抱えていたエアゾール製品分野において、HFO-1234zeは理想的なソリューションを提供しています。
持続可能な社会の実現に向けて、エアゾール製品メーカーだけでなく、消費者や事業者も環境配慮型製品を選択することが重要です。HFO-1234zeを使用したエアゾール製品は、その選択肢の一つとして、今後ますます身近な存在になっていくでしょう。
併せて UniPo㈱が 提供可能な 環境配慮商材、Low-GWP(低地球温暖化係数)を有する噴射剤商品をご紹介いたします。どうぞご覧下さい。
- C3H2F4 / Cas No. 29118-25-0 HFO-1234ze(Z) (Z)-1,3,3,3-Tetrafluoropropene
- C3H2F4 / Cas No. 29118-24-9 HFO-1234ze(E) (E)-1,3,3,3-Tetrafluoropropene