演色性と発光効率が、光合成有効光子効率にも影響?――その③

植物を育成するために高演色LEDが欲しいとの顧客からのコメントに、え?と思う方は多くいるでしょう。なぜ人間の視覚に適したカラーレンダリングされたLEDが植物の成長にも望ましいのか、疑問になりますね。

この疑問を答えるために、様々な関連実験と計算を行いました。冒頭のコメントの真の理由が何か、それを分析し、判明しましょう。

3.影響がない理由

前述のように、実験は可能な限り同じ条件で実施されました。全てのサンプルは同様に、パッケージが2835タイプを、そのほか、LEDダイが450nmのピーク波長、230mWの放射電力を採用しました。また、実験で使用される蛍光体は次の通りです。

  • Ra 80

緑色蛍光体:Lu3Al5O12:Ceピーク波長530nm、EQE(外部量子効率)74%;

赤色蛍光体:(Ca、Sr)SiAlN3:Euピーク波長625nm、EQE 85%;

  • Ra 85

緑色蛍光体:Lu3Al5O12:Ceピーク波長532nm、EQE 76%;

赤色蛍光体:(Ca、Sr)SiAlN3:Euピーク波長629nm、EQE 86%;

  • Ra 90

緑色蛍光体:Lu3Al5O12:Ceピーク波長532nm、EQE 72%;

赤色蛍光体:(Ca、Sr)SiAlN3:Euピーク波長640nm、EQE 78%;

  • Ra 95

緑色蛍光体:Lu3Al5O12:Ceピーク波長532nm、EQE 72%;

赤色蛍光体:(Ca、Sr)SiAlN3:Euピーク波長651nm、EQE 84%。

基本概念で紹介したように、光束と効率は人間の目の視覚であるため、光束の計算は次のように視覚感度に不可欠です。

スペクトルの形状は、光束と効率に影響を与える重要な要因の1つであると結論付けることができます。Ra 80からRa 95まで、視覚感度内の分布を減らすことにより、光束と効率が同時に減少します。図6は、これら4つのLEDが約同様の放射強度を示していますが(機器の誤差を無視)、光束に変換すると結果が変わります。

スペクトルの長波長の部分が主にCRI 15 TCS(テストカラーサンプル)のR9である飽和赤色の表現に影響することは広く理解されているかと思いますが、これらの実験では、明らかに長波長の部分がRa(R1からR8の平均)にも大幅に影響しているともう一つの現象がありました。実際、CRIの結果から、R9は最も可変性の高い変数であるため、R9はそれぞれ-7.36、19.12、62.49および91.55として計算されています。図8は、4つのCRI LEDからの特殊演色評価指数Riを示しています。

図8.異なるCRIのRi

この現象はCRI TCS 1-8の反射率で説明できました。(図9)。600nmから650nmまで、TCS1–8には14.8%~67.6%の変動に対応する反射率があります。つまり、600nm-650nm内の分布はTCS 1-8にも影響しています。

図9. CRI TCS 18の反射率

PPFとPPEの「P」は、何れも「Photosynthetically(光合成)」の「P」を意味しているけれども、特定の植物因子が一切計算に関与していません。関連する定数の他、PPFとPPEの値を決定したのは、スペクトルパワー分布(本質的に放射強度)です。この4000K LEDでのエネルギー変換のプロセスと、変換に影響を与える関連キーファクターは次のように説明します。

実験では、何れのCRILEDに使用される緑と赤の蛍光体が同じEQE性能を持つもので、その他、230mWの放射電力、450nmの波長と2.9V、150mAで駆動する同じLEDダイを採用したので、LED放射の計算に使用されるすべての変数出力とPPF / PPEは同じであることを意味しています。これで、CRIと発光効率はPPFとPPEに影響を与えないという結果と結論が得られます。しかし、この結論は同じ実験条件に基づいていることは前提条件としたものです。また、CRIの改善はスペクトルの長波長の改善を意味するとのことも一般的な基本認識です。

4.結論と思考

ここまで、CRIと発光効率はPPEに影響を与えないと結論付けられます。また、PPF / PPEの計算はPAR内の光子の量を測定できます。しかし、これには異なる光合成感度の重みは含まれていません。図10は、Ra 80およびRa 95のスペクトルは、クロロフィルaの吸収、クロロフィルのb吸収、フィトクロムレッド(Pr)および遠赤色光吸収型(Pfr)、および長波長(> 600 nm)範囲の感度との比較を示しています。 Ra 80とRa 95の最も異なる部分は、図10の緑と紫で表示されています。

図10.スペクトルと異なる光合成感度の比較。

どうやら、長波長(> 600nm)は光合成感度のピークに関与していると思われます。異なるCRIスペクトルを比較すると、Ra 95のピークは光合成感度のピークに近いため、クロロフィルa、クロロフィルb、PrおよびPfrの吸収を考慮すると、高CRIスペクトルの方は、よりよいパフォーマンスが得られます。「高CRI」は視覚的な色の表現ではなく、長波長(> 600 nm)での波長分布が十分「広い」であることを意味しています。勿論、特定の成長段階での特定の植物には、実際どんなパフォーマンスが得られるのかについては、生物学者に任せたいと思います。

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