演色性と発光効率が、光合成有効光子効率にも影響?――その①

植物を育成するために高演色LEDが欲しいとの顧客からのコメントに、え?と思う方は多くいるでしょう。なぜ人間の視覚に適したカラーレンダリングされたLEDが植物の成長にも望ましいのか、疑問になりますね。
この疑問を答えるために、様々な関連実験と計算を行いました。冒頭のコメントの真の理由が何か、それを分析し、判明しましょう。

-結論 –
まず、有効光子効率の評価では、CRI(演色評価数)と視覚効果は植物育成に大きな影響が見られませんでした。
しかし、特定の植物の実際のパフォーマンスから見ると、CRI(演色評価性)と視覚効果は、植物の成長にとって重要な指数になるかもしれません。

1.基本なコンセプト
まず、これから言及および使用される、いくつかの基本概念を明確にしましょう。
1.1 CRI(演色評価数)
CRIは、100(Ra)のフルスコアで物体色を再現する光源の能力を評価する指数です。このメトリックは、マンセルテストカラーサンプルを選択し、さまざまな光源を参照ソースとして、測定及び光源を参照し、色収差の結果を比較します。収差が大きいほど、演色評価数は低くなります。最初8つの色票の演色評価数の平均値を取って、Ra(平均演色評価数)を計算できます。また、15の色票を取って、Ri(特殊演色評価数)まで計算できます。この計算には、人間の目が感じる三刺激の値も含まれるので、CRI(演色評価数)は視覚感覚の一種とも言えるでしょう。

図1. CRI計算用15のマンセルテストカラーサンプル。

現在、一般的に80~98の様々なCRIグレード(Ra)を有するLED製品が市販されています。ここで、CRIを改善する方法について、もう少し説明しましょう。
スペクトルレベルでは、CRIスコアを上げるための蛍光体の組み合わせのさまざまなレシピがありますが、最も効果的で実用的な方法は、赤波長を強調することです。図2は、Ra 80とRa 98の比較を示しており、3000Kと6000Kのスペクトルを例に取っています。赤色のスペクトルを長波の方へシフトすると、CRIは大幅な増加が見られます。

図2.異なるCRI数値の光源スペクトル

1.2発光効率
LEDは、従来の光源と比較して、その顕著な省エネ性能で有名です。また、これによりノーブル賞を受賞しました。別の観点から見ると、省エネとは効率的に意味します。発光効率と効果を評価するにはさまざまな測定方法があります。視感度は、555nmにピーク感度を持つ明所視に基づいて測定されます(図3)。

図3.人間の視感度

光束計算の理論によれば、同じ条件では、スペクトルが明所視と重なるほど、より高い視感度が得られます。また、同理論では、一般的に、高CRI LEDの発光効率は比較的に低くなることが見られます。
1.3 WPE(壁プラグ効率)
壁プラグ効率は電気を光に変換する効率を評価します。CRIとは異なり、WPEが視覚を考慮せずに物理的特性を計算するので、WPEへの理解と分析は、適切なヒートシンクを選ぶための計算にも役立ちます。

図4. LEDが点灯するときのエネルギー変換プロセス

1.4 PAR(光合成有効放射)
光合成有効放射は、光合成に最も敏感な波長範囲が400nm〜700nmであることを定義しています。人間の目の視覚範囲に似ているが、感度はかなり異なります(図5)。

図5.光合成感度。

1.5 PPF(Photosynthetic Photon Flux「光合成有効光子束」)とPPE(Photosynthetic Photon Efficacy「光合成有効光子効率」)
光合成有効光子束(PPF)は、PARに基づいて計算されます。本質的には、マイクロモル(μmol)を単位として、光源によって毎秒生成される光子の量となります。この計算は、アボガドロ定数(Na= 6.022×1023)とプランク定数(h= 4.14×10-15eV∙s)、光速度(c= 3×108m/s)、スペクトルパワー分布(特定のナノメートル間隔で離散、W/nmとして測定)で行いますので、各ナノメートルでの光合成光子束でも計算できます。

明らかに、PPFの計算に使用される定数と変数はすべて、光合成的または生物学的の重み付けを行わない「純粋な」物理値です。これは、PAR内に確実のスペクトルパワー分布がある限り、スペクトルの形状に関係なく同じPPFを取得できることも意味しています。
光子束の値が分かった場合、光子効率の計算は容易になります。PPEは、電力を分母として、光源がどれだけ効率的に光子を生成するかを測定するため、一般にµmol / J(J =ジュール、 W・sへ)を単位にしています。同様に、PPEの計算も「純粋な」物理値であるので、光束と効率の計算とはまったく異なります。

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